キリル・ペトレンコ

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2018年にベルリン・フィルの首席指揮者・芸術監督に就任予定のロシア出身の指揮者。

1972年2月11日にソビエト連邦のオムスクで生まれる。父はヴァイオリニスト、母は音楽学者という音楽的に恵まれた家庭で育った。はじめはピアニストを目指していたようで、11歳の時に地元のオーケストラを相手にピアノ協奏曲を弾いている。18歳になるとオーストリアに移り、フォアアールベルク州立音楽院とウィーン国立音楽大学でそれぞれピアノと指揮法を学び、1995年、23歳の時にブリテンのオペラで指揮者デビューする。

1999年から2002年までマイニンゲン宮廷劇場の音楽総監督、2002年から2007年までベルリン・コーミッシェ・オーパーの音楽総監督を務めてオペラ指揮者としての評価を着々と高め、2013年からドイツの名門・バイエルン国立歌劇場の音楽総監督に就任。一方で、オペラ以外でもベルリン・フィルやコンセルトヘボウ管、シカゴ交響楽団といった世界の名門オーケストラと共演し、2015年にベルリン・フィルの次期首席指揮者・芸術監督に選出されるにいたる。

こうして見ると、ベルリン・フィルの首席指揮者にもなるべくしてなるように思えるが、CDはマイナーな曲目が多く、しかも数えるほどしかなく、また来日公演なども皆無であったことから、日本ではまったくの無名といってもよい存在であった。ショスタコーヴィチの全曲録音を完成し、日本で辻井伸行とも共演しているヴァシリー・ペトレンコと方々で混同される始末である。

ベルリン・フィルの首席指揮者というと、アルトゥル・ニキシュ、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、ヘルベルト・フォン・カラヤンといった歴史的な大指揮者が長らく務めてきたが、楽団員の投票によって選出される方式に変わってからは、クラウディオ・アバドとサイモン・ラトルという従来の大指揮者像から意識的に遠ざかろうとする人たちを選び世間を驚かせてきた。

逆に、従来の大指揮者像に意識的に近づこうとしている人たちがダニエル・バレンボイムやクリスティアン・ティーレマンで、特にティーレマンは今回の後任人事でも最有力候補と噂されていたが、案の定また意外性のある人物が選出されることになった。日本では、アバドは当然としてラトルもそこそこ名が浸透していたから、今回は意外性どころではなかったはずである。

とはいえ、ペトレンコは2013年から2015年のバイロイト音楽祭でメインの『ニーベルングの指輪』を任されているように、ドイツでの評価は昔のアバドやラトルより高いといってもよく、タイプも意識的に従来の大指揮者像から遠ざかろうとしていた2人とは違い、緻密ながらも大胆で思い切りのよい音楽を作り出すことに成功している。